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それ本当にシミ?光治療やピコで肝斑が悪化する理由と正しい治療順序

日中の日差しも少しずつ落ち着いてきました。紫外線量がピークを越える秋は、夏の紫外線ダメージをリセットし、本格的なシミ治療や美肌ケアを始める絶好のシーズンだとわたしは考えています。

 

神戸アカデミア美と健康のクリニックでも「夏にシミが目立ってきた」「そろそろレーザーを受けたい」というご相談を数多くいただきます。

 

多くの方が口にされるのが「私のこれって、普通のシミですか?それとも肝斑(かんぱん)ですか?」という疑問です。また、「他院で肝斑と言われたけれど本当でしょうか」とセカンドオピニオンに来られる方もいらっしゃいます。

しかし、私の診断では「それ肝斑じゃない。普通のシミだったり、肝斑でもしみでもなくADM(後天性真皮メラノサイトーシス)だった」というケースが珍しくありません。
そしてもっと深刻なのが、「シミを薄くしたくて手軽な光治療やピコトーニングを受けたら、良くなるどころか、かえって濃くなった」とこられるケースです。

実は、しみ、肝斑などの診断は非常に難しいです。医師によって診断が違うこともしばしばあります。

シミ・肝斑・そばかすなどの色むら治療で最も重要なのは「これがなにか見極め、正しい順番でアプローチすること」。

今回は、シミと肝斑の違い、なぜ良かれと思った美肌治療で悪化してしまうのか、その医学的根拠と改善するための最善のステップをお話しします。

 

1. 一般的なシミと肝斑の決定的な違い

顔に現れる茶色い色素斑の代表格が「しみ」と「肝斑」です。両者は治療法がまったく違うのですが、診断が難しいケースもよくありますし、シミと肝斑が混在しているケースもあります。というか、しみと肝斑が混在していることのほうが多いと私は考えます。

  しみ 肝斑
原因 紫外線ダメージや加齢 ホルモンバランス、物理的刺激、慢性炎症
部位 どこでにでもできます 主に頬骨沿いに左右対称にできる
特徴 輪郭がはっきり 輪郭がぼんやり、もやっと
治療方法 レーザーなどでメラニンを破壊する

強い刺激はNG

優しくケアが重要

 

こんな感じの見極め方ってたくさん見かけますね。

一般の方に判断はむずかしいことも多いはず。

医師でもわかってない人多い、と私は思ってます。

シミと肝斑って医学部では習いません。しっかり診断できる先生はそんなに多くないのでしっかり信頼できる先生を見つけてください。

 

シミは、紫外線によって過剰生成されたメラニンが表皮にとどまっている状態です。境界がくっきりしているため、適応するレーザーを照射してメラニンを砕けばスムーズに薄くなります。

一方の肝斑は、単なる色素沈着ではありません。近年の皮膚科学研究では、「メラノサイトの過敏状態」「表皮・真皮の慢性炎症」「基底膜の脆弱化」「微小毛細血管の拡張」が複雑に絡み合った非常にデリケートな皮膚病態であることが分かっています。

 

2. ⚠️手軽な「光治療」や「ピコトーニング」で肝斑が悪化する理由

「ダウンタイムがないから」「エステ感覚で手軽だから」と、光治療(IPL)やレーザートーニング、ジェネシスなどを定期的に受けている方も多いのではないでしょうか。
しかし、活動期の肝斑が潜んでいる肌にこれらの治療を安易に照射すると、熱や衝撃波の刺激によってメラノサイトが激しく暴走し、治療前より濃く広がる(増悪・再燃)リスクがあります。
これは単なる推測ではなく、国内外の学術論文で数多く報告されている厳然たる事実です。

 

光治療(IPL)による悪化エビデンス

  • 約30〜40%で増悪・色素沈着を誘発
    アジア人の肝斑に対するIPL照射を検証した研究(Wang CC, et al. Dermatol Surg. 2004)では、一時的に薄くなった例があった一方で、3〜4割の患者で照射後に肝斑の悪化や強い炎症後色素沈着(PIH)が認められました。

 

  • 広帯域波長による「面での熱蓄積」
    単一波長のレーザーと異なり、IPLは500〜1200nmの複合波長です。メラニンだけでなく周囲の組織や毛細血管にまで広く熱がこもるため、炎症を誘発し、休眠状態だったメラノサイトを一気にたたき起こしてしまいます。

 

ピコトーニング・レーザーによる悪化エビデンス

  • 「ピコなら安心」の誤解
    ピコ秒レーザーは熱緩和時間を下回るため「色素沈着が起きにくい」と喧伝されがちです。しかし、メタアナリシスや臨床試験(Feng J, et al. Lasers Med Sci. 2023 / Wong CSM, et al. 2021)において、ピコトーニングであっても設定や肌状態を誤ればPIHや肝斑のリバウンドを一定頻度で引き起こすことが示されています。

 

  • 基底膜破壊とメラニンの真皮滴下
    ピコ特有の強力な衝撃波が、元々もろくなっている肝斑部の基底膜を破断させることがあります。するとメラニンが真皮層へこぼれ落ち、非常に治りにくい難治性の色素沈着へと移行してしまうのです。さらに頻回照射を重ねることで、部分的に色が抜けてしまう色素脱失の報告もあります。

3. トラネキサム酸内服は危険?誤情報と医学的真実

肝斑をなおすにはどうしたらいいの?

その答えとなる第一選択が「トラネキサム酸の内服」です。

最近、SNSなどで

「トラネキサム酸を飲むと血栓ができるから危険」

「肝斑に内服を出すのは間違っている」

といった極端な言説を見かけることがあります。

センセーショナルな方が見てくれるからかな?とわたしは思います。

トラネキサム酸の使用実績は長く、適切な管理下で使えば安全性が高く、認められた治療です。

 

561名を対象とした大規模研究の真実

トラネキサム酸が色々言われるのは、止血剤として使われることがあり、血栓ができる可能性があるからです。たしかに止血剤として使われることもありますがその場合、高用量です。

肝斑治療では「低用量」でつかいます。

  • 561名の肝斑患者コホート研究(Tan AWM, et al. J Am Acad Dermatol. 2016)
    シンガポールで行われた561名のアジア人肝斑患者を対象とした追跡調査において、低用量トラネキサム酸(500mg/日)の投与により89.7%に確実な改善効果が認められました。
    気になる血栓塞栓症(深部静脈血栓症)を発症したのは、561名中わずか1名(0.18%)でした。そしてその1名を詳しく検査したところ、「先天性プロテインS欠乏症」という、生まれつき血液が固まりやすい遺伝的素因を元々持っていた方だったことが判明しています。

健康な方が医師の管理下で適切な内服をする限り、過度に血栓を恐れる医学的根拠はないとわたしは考えます。

ただし

・血栓症の既往や家族歴

・タバコ

・低用量ピル等の内服歴

などがある方は注意が必要なことも確かです。

 

私は肝斑内服、賛成派です。肝斑の方には内服をお勧めしています。

近日中に、肝斑内服についてコラムを書く予定にしていますので、気になる方はぜひご覧ください。

 

4. 肝斑がある方の正しい治療ステップ

肝斑があると肌を刺激する肌治療にも制限がかかります。

できない治療が多くなってしまいます。

しかし、肝斑があるからといって美肌治療を諦める必要はありません。大切なのは「まず肝斑をコントロールしてから」という正しい順番です。

STEP 1:まずは徹底的な「消火活動」

まずは肝斑を悪化させている興奮状態のメラノサイトを鎮静化させます。

  • トラネキサム酸等の内服:メラニン生成シグナルと微小炎症をブロック。
  • 徹底した摩擦ゼロ:クレンジングや洗顔でこする刺激を完全に排除します。これだけで肝斑が目立たなくなる方も大勢いらっしゃいます。
  • 刺激成分の除去:洗顔やクレンジングなどスキンケアの成分を刺激の強いものから優しい成分に変えることも重要です。

 

STEP 2:鎮静化を確認してから「シミ治療・肌育治療」へ

残念ながら肝斑を「消す」ことは難しいです。

もちろん今より薄くコントロールすることは可能です。

内服とスキンケアで肝斑の勢いを落ち着かせてコントロールできれば、そのほかの悩みへのアプローチが安全に行えます。

逆を言えば肝斑があると美容治療が安全にうけられないということ。

私は肝斑?それともシミ?どっち?と思ってる人が多いですが、ほとんどの方は両方あると考えた方がいいでしょう。

まずは肝斑をコントロールすること。

 

5. まとめ:安易にレーザーを当てる前に、まずは正確な診断を

「他院で肝斑と言われて諦めていたけれど、実はADMや普通のシミだった」「シミだと思って機械を当て続けたら、隠れていた肝斑が濃くなってしまった」「YAGレーザー・YAGシャワーなどで美肌治療していたらシミが濃くなった」――診察室では、こうしたミスマッチを本当に多く見かけます。

自己判断や、エステサロン等での安易な施術は後悔のもとになります。

紫外線が弱まる秋こそ、ご自身の肌を正しく知り、根本から立て直す絶好のチャンスです。

当院では形成外科専門医の視点から、安全で最も遠回りのない治療をご提案いたします。「自分の肌は何から始めるべき?」と迷われている方は、ぜひご相談ください。

執筆者:西記念神戸アカデミア美と健康のクリニック院長 木谷慶太郎

形成外科専門医 木谷慶太郎

日本形成外科学会 形成外科専門医

日本美容外科学会JSAPS 正会員

日本創傷外科学会会員 正会員

日本レーザー医学会 正会員

日本抗加齢医学会 正会員

アラガン社 VST(ボトックスビスタ)認定医

アラガン社 ヒアルロン酸バイクロスシリーズ注入認定医

経歴

  • 2010

    長崎大学医学部医学科卒業

  • 2010

    六甲アイランド甲南病院 初期臨床研修

  • 2012

    小野市民病院形成外科(現:北播磨総合病院)

  • 2013

    姫路赤十字病院形成外科

  • 2014

    神戸大学医学部付属病院形成外科

  • 2020

    西記念神戸アカデミアクリニック 

  • 2023

    ルネッサンス美容外科神戸院 院長

  • 2025

    西記念神戸アカデミア美と健康のクリニック 院長就任